似非王子と欠陥令嬢
「…なるほど。
彩花様は攻撃魔術よりも防御や癒しに特化しているみたいですね。」

「へー!
やっぱり聖女だからかな?
あっ聖女だからですか?」

「光魔術への適性がS、闇魔術への適性がEになっているので多分そうなんでしょうね。
ではまず今日は魔力を感じる所から始めましょうか。」

彩花嬢が目を輝かせている。

魔術への興味はあるらしい。

「こう両手を出して掌を上に向けて貰えますか?」

「こう?」

「そうです。
ちょっと手を触りますね。」

キャロルは彩花嬢の手を掴む。

彩花嬢の魔力の流れに逆流させる様にキャロルの魔力を流し込んでいく。

「うわっ何これ気持ち悪いっ!」

「今何か体の中の流れを逆流してきているのが分かりますよね?
それを押し返すように頑張ってみて下さい。」

彩花嬢は本当に気持ち悪いのであろう。

顔が青ざめている。

だが真剣な顔で目を閉じて唸り始めた。

…がキャロルの魔力を押し返そうとする動きはない。

ただ唸っているだけである。

時間がかかると判断したキャロルは空を見上げて飛んでいる雲の数を数える事にした。

丁度よく今日は羊雲が浮かんでいる。

数える物には困らないだろう。

爽やかな秋風が吹いている。

キャロルが雲を数え終わり紅葉し始めている葉の数を数え終わった頃、かなり弱い力ながら魔力が押し返されたのに気が付いた。

「出来た…!」

知らない間に彩花嬢は汗びっしょりである。

かなり大変だったのだろう。

「まだですよ。」

だがキャロルは首を振る。

「今、何となく魔力の流れる場所が分かりましたよね?
ではもっと強く流して下さい。
今のでは魔術は発動出来ません。」

キャロルの言葉に彩花嬢はむっとした顔をしながらまた目を閉じて唸る。

暫くするとほんの少しだけ抵抗が強くなった。

「…そうです。
では今から私は手を離すので離したら掌の上に球状の水の玉を乗せるイメージをしながら『ウォーターボール』と唱えて下さい。
いいですか?」

彩花嬢は汗をダラダラ流しながら首を縦に振った。

キャロルはそっと手を離す。

「うっウォーターボール!!!」

彩花嬢の掌から蛇口の壊れた水道のように水が流れ落ちる。

「きっキャロルさん!
出来た!
出来ました!!」

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