似非王子と欠陥令嬢
1週間後。

疲れた様な顔をして塔にやって来たレオンの口から出た言葉にキャロルは苛立っていた。

役に立たないにも程があるのだ。

「仕方ないだろ?
父さんの書斎まで忍び込んだし殿下の執務室や寝室の本棚も見たけどそれらしき地図は一切ねえんだから。」

「…なんで有事の際の通路を宰相まで知らないなんて事が有り得るんですか。
絶対探しきれてないだけですよ。」

ぶすったれたキャロルの言葉にレオンは毛玉に餌をやりながらため息をついた。

レオンだって必死で探したのだ。

全く手掛かりはなかったが。

「そもそもさ、殿下が有事の際に使う抜け道って言ったんだよな?
なら多分それ陛下と殿下しか知らない可能性あるぞ。」

「普通宰相なら知ってるでしょう。
まあ後はリアム様辺りは知っててもおかしくないですか?
連れて逃げなきゃいけない立場なんですし。」

レオンは首を横に振る。

「バカだなキャロル。
殿下に何かあった場合俺達が先に逃げたりしちゃダメだろ?
殿下と一緒に逃げるならまだしもさ。
だから俺達が知らないのはむしろ当たり前だし地図なんかあったら通路ばれちまうだろ。
諦めて殿下に聞くしかねえんじゃね?」

「…それだと負けに近付いちゃうじゃないですか。
あっ聖女とか第二王子辺りは知らないんですかね?
あっちのが隙ありそうじゃないですか?」

キャロルの言葉にレオンは呆れた様な目を向ける。

「…あのなあキャロル。
うちの国は基本1番上の男子が王位を継ぐんだぞ。
じゃあ1番王太子や国王に対して有事を起こしそうなのって誰だよ。」

「…2番目以降の男子ですね。」

「だろ?
そんな奴らに絶対教えてるわけないだろ。
むしろ通路の存在自体トップシークレットだろうな。
だって革命や戦争の時残したいのは国王自身かその跡を継ぐ人間だろ?
多分王妃様も知らねえぞそれ。」

「…たしかに。」

レオンに馬鹿にされたのは悔しいが言っている事は最もだ。

地図さえそもそも存在しておらず直接口頭で伝えていると考えた方が自然だろう。

いきなり難易度が跳ね上がった気分である。

「まあ地図を探すのは無理だ。
多分そもそもない。」

「…そうですね。
通路自体を見付けるしかなさそうです。」

「……まじで?」

レオンのげんなりした声と裏腹にキャロルは爪を噛みながら通路の入口がありそうな場所に思いを馳せていた。
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