似非王子と欠陥令嬢
明かりを付けられない為月明かりを頼りに本を探す。

今日がたまたま満月で本当に良かった。

ルシウスはわざと満月の今日行こうとしていたのかもしれない。

しかし本当に素晴らしい蔵書の数だ。

キャロルの心を全ての本がくすぐってくる。

全て読んでいきたい欲を振り払いキャロルは禁術について取り扱った本だけを手に取り目を通す。

「…体毛が10倍速で伸び続ける呪術。
これも一応禁術なんだ。」

何とも微妙な禁術も多く今の所空振りである。

確かにかけられたら迷惑ではあるだろうが禁術にする程の物だろうか。

キャロルは首を傾げながら本棚に戻す。

その次に書かれていた禁術も平均の1.1倍のスピードで老いが進むという何とも言い難い物であった。

まあこれはかけられたのが何代か前の美を追求していた王女だったらしいので、それはブチ切れて禁術となっても仕方ないかもしれない。

でも30歳の時に33歳に見える様になったとして禁術にする程怒り狂う事だろうか。

乙女心とは何とも難しい。

ただキャロルの呪いには一切関係なさそうだ。

キャロルは溜息をついて本をまた戻す。

この量の本の中にちゃんと目的の書物はあるんだろうか。



本を探し出して3時間程経った頃。

冬で夜明けが遅いとは言え空は既に白んで来た。

今日はもう諦めるしかあるまい。

もうすぐルシウスをメイドが起こしに来てしまう時間だろう。

バレたら説教では済まないのだ。

キャロルが諦めてルシウスを探そうと持っていた本から顔を上げると同時に肩を叩かれる。

「うわっ、びっくりした。」

「ごめんね驚かせて。
…あったよ。」

ルシウスが数冊の本を抱えている。

キャロルが思わず飛びつこうとするとルシウスがそれを手で制した。

「…ここで読む時間はもうないよ。
今は早く部屋に戻ろう。
メイドが来てしまうからね。
キャロルも天井から戻らなきゃならないでしょう?
後で塔に持って行くからそこでゆっくり読もう。」

「禁書を持って出ても大丈夫なんですか?」

「私ならバレたら父上に雷を落とされる位だから大丈夫。
ほら早く毛玉を捕まえて行こう。」

キャロルは慌てて毛玉を抱えるとルシウスに背中を押され禁書コーナーを後にしたのだった。
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