似非王子と欠陥令嬢
一体どんな人物なのかと首を捻るルシウスの耳にレオンの小さな呟きが聞こえた。
「本当に来たとは…。
幻影の塔の魔女。」
流石に王命には逆らえなかったかと呟くレオンの視線の先を追った。
ドサッ!!!
見合いの為に用意された茶器の横に突然置かれた羊皮紙と書物が山となる。
何事かと見上げるとそこにはキャロルと思われる女性が息を切らせて立っていた。
月の無い闇夜の様な黒髪、それ以上に何も映さない様な漆黒の瞳。
呆気に取られるルシウスを一瞥して彼女はぺこりと頭を下げた。
「遅くなって申し訳ございません。
お初お目にかかります。
私キャロル・ワインストと申します。
お目にかかれて光栄です。」
…光栄だと言ってはいるがその瞳にルシウスへの興味など欠片も見当たらないのは何故なのか。
「あっああ…ルシウス・ノア・マリアヌだ。
こちらこそ本日はお越し頂き感謝する。」
とりあえず挨拶を返すルシウスをキャロルは死んだ魚の様な目で見つめる。
…居心地が悪い上に何だか寒気までしてきた。
無言で睨み合い…いや見つめ合っているとキャロルが口を開いた。
「…挨拶も終わりましたし、つきましては殿下にお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」
「なっなんだろうか?」
ルシウスの声が多少震えたのは仕方ないと言えるだろう。
先程まで見つめ合っていたその瞳は漆黒の死人のような瞳の周りの白目部分を隙間なく充血させていたのだから。
こびり付いた様な隈も手伝って余計に怖い。
軽いホラーだ。
夜に出会ったら失神してしまう自信がある。
「正直に申し上げます。
私、開発に追われておりまして1分1秒が惜しい状況にございます。
つきましては見合いの場であると承知の上で作業させて頂きたく思います。
ご不興でしたら今すぐ立ち去りますのでお許し頂けませんか?」
「あっああ…大丈夫だ…。」
ルシウスが了承するとキャロルは急いで椅子に座りペンをインクに浸すと羊皮紙に書きなぐり始めた。
まるで暴風雨である。
(一体この状況をどうしたらいいんだ…。)
呆気に取られながらも助けを求めてレオンを見るが友人であるはずの彼は彼女の羊皮紙を手に取りへーと楽しげに眺めている。
ルシウスは今日何度目か分からない溜め息を吐き自分も執務をしようとメイドに用意を促したのだった。
「本当に来たとは…。
幻影の塔の魔女。」
流石に王命には逆らえなかったかと呟くレオンの視線の先を追った。
ドサッ!!!
見合いの為に用意された茶器の横に突然置かれた羊皮紙と書物が山となる。
何事かと見上げるとそこにはキャロルと思われる女性が息を切らせて立っていた。
月の無い闇夜の様な黒髪、それ以上に何も映さない様な漆黒の瞳。
呆気に取られるルシウスを一瞥して彼女はぺこりと頭を下げた。
「遅くなって申し訳ございません。
お初お目にかかります。
私キャロル・ワインストと申します。
お目にかかれて光栄です。」
…光栄だと言ってはいるがその瞳にルシウスへの興味など欠片も見当たらないのは何故なのか。
「あっああ…ルシウス・ノア・マリアヌだ。
こちらこそ本日はお越し頂き感謝する。」
とりあえず挨拶を返すルシウスをキャロルは死んだ魚の様な目で見つめる。
…居心地が悪い上に何だか寒気までしてきた。
無言で睨み合い…いや見つめ合っているとキャロルが口を開いた。
「…挨拶も終わりましたし、つきましては殿下にお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」
「なっなんだろうか?」
ルシウスの声が多少震えたのは仕方ないと言えるだろう。
先程まで見つめ合っていたその瞳は漆黒の死人のような瞳の周りの白目部分を隙間なく充血させていたのだから。
こびり付いた様な隈も手伝って余計に怖い。
軽いホラーだ。
夜に出会ったら失神してしまう自信がある。
「正直に申し上げます。
私、開発に追われておりまして1分1秒が惜しい状況にございます。
つきましては見合いの場であると承知の上で作業させて頂きたく思います。
ご不興でしたら今すぐ立ち去りますのでお許し頂けませんか?」
「あっああ…大丈夫だ…。」
ルシウスが了承するとキャロルは急いで椅子に座りペンをインクに浸すと羊皮紙に書きなぐり始めた。
まるで暴風雨である。
(一体この状況をどうしたらいいんだ…。)
呆気に取られながらも助けを求めてレオンを見るが友人であるはずの彼は彼女の羊皮紙を手に取りへーと楽しげに眺めている。
ルシウスは今日何度目か分からない溜め息を吐き自分も執務をしようとメイドに用意を促したのだった。