似非王子と欠陥令嬢
ルシウスが宙を見上げてポツリと呟く。

「…ほら、キャロルを呼んでるよ。
もう帰らなきゃ。」

ルシウスがキャロルから手を離す。

キャロルは慌ててしがみついた。

置いて行けるわけがない。

だがキャロルの体は誰かに引き摺られる様にルシウスから引き剥がされてしまう。

「殿下!!!」

キャロルは無我夢中でもがいた。

離れたらもう二度と会えない様な気がしたのだ。

離れるキャロルにルシウスは笑いかける。

「大丈夫。
キャロルを死なせたりはしないから。」

キャロルは激しく首を横に振る。

そんな事求めてない。

なのに水中に潜ったかの様に声が出ない。

キャロルは返事すらも出来ないままルシウスの姿は真っ白な光と共に消えてしまったのだった。







体が熱を持った様に暑い。

肩に鉄杭でも刺さっているんじゃないかと言うくらい激痛が走る。

びっしょりと汗をかきながら目を開けると目を真っ赤に充血させたレオンの顔が視界に飛び込んできた。

「キャロル!!!
良かった…お前まで失うかと思って俺……!」

レオンがキャロルの手を握り締めながらはーっと長い長い安堵の息を吐く。

キャロルはゆっくりと周りを見渡した。

「…ここは?」

「ここは医務室だ。」

起き上がろうとすると全身が酷く痛む。

細かく針の刺さった服でも着ているかの様だ。

思わず呻いて布団に突っ伏してしまう。

「無理して起きるなって!
お前昨日やっと毒が抜けたんだぞ。
まだ後遺症は残ってんだしずっと寝てたんだから急に起きるなって。」

「ずっと寝てた……?」

「ああ。
大体3週間ちょっと眠り続けたんだぞ。
出血多量に毒が全身に回ってるし本気でもうダメかと思ったんだからな。」

キャロルはガバッと布団から跳ね起きる。

全身が打撲した様に痛む。

「3週間以上って…!
殿下の協議会は?!」

「大丈夫、それは明日だ。
証拠も俺とリアムで大体手に入れられてるし問題はないから。
キャロルはゆっくり休め。」

「ダメなんです!」

キャロルは痛む体を抑えながらベッドから這い出でる。

レオンがキャロルの鬼気迫った表情にオロオロとしている。

キャロルがベッドから転がり落ちる。

「…レオンお願いがあります。」

キャロルは肩で息をしながらレオンを見上げる。

「私を殿下の部屋に連れて行って下さい。」

キャロルのその目に威圧されレオンはごくりと唾を飲み込みながら頷いた。
< 276 / 305 >

この作品をシェア

pagetop