似非王子と欠陥令嬢
国王は羊皮紙を何枚か取り上げた。

「…今回の件を正規の手続きを踏んで処理してしまえばどうなると思うかね?
キャロル嬢の禁術の使用を知っていて黙っていた者、それでも尚協力した者達も全て処分しなければならなくなる。

子供は国の宝。
大人が庇ってやらねばなるまいて。
だから既にお気付きではあろうが幻影と聴覚遮断の魔術は施しておる。
ここからは正規の処分ではなく私情を挟んだ処分を決める時間としよう。
それ故儂はワインスト侯の処刑は納得いかぬ。
却下だ。」

まるで子供の様な言い分に父親は口をパクパクと金魚の様に動かす。

キャロルは首を傾げた。

私情を挟んだ処分とは何なんだろう。

国王はふわりと口元を緩めた。

「まずは聖女殿。
元々は我々の身勝手で呼び出し祭り上げ平民に落とすなど許される行為ではない。
彼女については召喚されたと我々以外知らぬ。
ならばこのまま聖女を名乗り続けて支障はあるまい。
どう思う宰相?」

「陛下の仰せのままに。」

宰相がとってつけた様な真面目な顔をして答える。

キャロルは目を丸くした。

国王の大人が庇うの意味が見えたのだ。

三大公爵家の1人が手を上げる。

カルヴィン公爵だ。

「えー陛下。
ハリー第二王子殿下につきましては本来16歳の誕生日に再計測のご予定にございます。
そして功績を奪った事につきましても我々大人の傀儡となってしまわれただけの事。
継承権剥奪については本来の予定通り16歳まで保留、その他に関しましてはハリー第二王子殿下の罪にするのは行き過ぎかと。」

「ふむ。
なるほど。」

頷く国王の横で宰相がもったいぶった様に羊皮紙にペンを走らせている。

そこからはキャロルに口を挟む暇はなかった。

三大公爵家や父親、国王や宰相が子供を守る為に議論を交わしている。

大人とは汚い。

権力に溺れ金で脅す。

子供に倫理を説き大人は仕方ない事もあると言い訳する。

そんな大人が信用出来なかった。

大人等汚いだけの存在だと。

だが子を守ろうとする思いだけは本物で。

何だか笑えて来てしまう。

大人はやっぱり汚くて狡い。

だけどそれが何だか温かい。




議論が終わったのだろう。

国王がキャロルの方に向き直った。

窓から見える景色が薄暗い。

それほどまでに時間が経っていたのだと気付かされた。

「…では決まった通りエバンネ王妃とアルバート王弟に関しては我々で精査した後処分を決定する事とする。」
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