似非王子と欠陥令嬢
「そしてキャロル・ワインスト侯爵令嬢。」

キャロルは国王に名前を呼ばれピクリと肩を揺らした。

父親の喉がゴクリと動くのが見えた。

いくら子供とは言え犯した罪の重さがハリー達とは違う。

先程の議論も8割方キャロルの事であった。

どう処分が決まったのか分からない。

「そなたとは昨晩約束を交わしておる。
…処分の発表については後程伝える物としよう。
そう睨むなワインスト侯。
悪い様にはせぬ。」

「…この目は生まれつきにございます。」

生まれつきと言っているが明らかに視線に殺意が篭っている。

国王はやれやれと首を振った。

「…今から15分後儂は魔術を解く。
宰相は兵と共にアルバート王弟と王妃を牢に連れて行きなさい。
この証拠品も執務室へ運んでくれ。」

王妃が目を見開いているが声を荒らげたり暴れる様子は見えない。

静かだとは思っていたが魔術をかけられていただけだったようだ。

「そしてレオン。
キャロル・ワインストを息子の寝室に連れて行き待機していなさい。
近衛騎士のリアムも共に行くように。」

「はっ畏まりました。」

リアムが答えキャロルの傍に駆け足でやって来る。

「行こうキャロル嬢。」

リアムに促されキャロルは国王に慌てて頭を下げてから広間を飛び出した。

廊下に出た途端夜の秋風が興奮したままのキャロルの頬を冷ます。

レオンも後ろから追い付きキャロルの横に並んだ。

「…処分どうなるんだろうな。」

「分からん。
だが悪い様にしないと言う陛下の言葉を信じるしかないだろう。」

レオンの不安気な呟きに眉間に皺を寄せたリアムが答える。

「あーだけど何とかならないかって思うだろ?
何か手がないかキャロル?
…キャロル?」

「…何ですか?」

涼しい風を満喫していたキャロルの額にレオンが手を当てる。

「熱!!!
キャロル熱ヤバい事になってるぞ!!?」

「今更かレオン。」

「今更って何でリアムはそんなに平然としてんだ!?」

「俺の配置はキャロル嬢の後ろだ。
ずっとふらついてるのも汗が滴るのも見えていたからな。」

「…その状態でやり切ったのかよ。
てかこのまま殿下の部屋行くのか?
医務室行ってからのが良くないか?」

レオンの言葉にキャロルは首を横に振る。

「言った通り頭は冴え渡っているので大丈夫です。
…それより早く殿下の所へ参りましょう。
もう時間がありません。」
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