似非王子と欠陥令嬢
あの顔合わせから1週間。

キャロルは魔道具開発に終われながらも平和に過ごしていた。

「キャーロールー。
あーそーぼー。」

何故かあの日から毎日レオンが塔に入り浸るようになっていたが。

今朝も早朝から扉を叩いている。

寝癖の着いた頭のまま扉を開けた。

「…おはようございます。」

「おはよーキャロル。
今日も良い天気だな!」

おじゃましまーすと勝手に持ち込んだ賢者をダメにすると噂のクッションに座り、これまた勝手に持ち込んだローテーブルに腕に抱えた書類の束を置いた。

「あっこれ今日の朝ご飯と、昨日キャロルの妹が押し付けてきたクッキー。
一緒に食べようぜー。」

「…クッキーは殿下のじゃないんですか?」

「殿下がよく知らない令嬢の手作りの品なんて食べるわきゃねーだろ?
大丈夫だいじょーぶ。
毎回捨てるか俺かリアムに渡して来るんだから。」

「まっそれもそうですね。」

キャロルもソファーに腰掛け妹が作ったというクッキーを齧る。

なかなか美味い。

まぁルシウスは立場上暗殺なんかも警戒せねばならないし仕方ないだろう。

「あっあとフワリー嬢が毎日キャロルの事探してるぞ。」

「フワリー嬢?
誰ですかそれ。」

「えっとキャロルが一芸大会で歌歌わせた令嬢だな。」

レオンの中で顔合わせの茶会はいつの間にか一芸大会に変わっていたらしい。

「あーあの方ですか。
何か用事でも?」

「さあ?
キャロルは離宮内じゃ部屋に引きこもってる設定だけど毎日部屋の前に来てるらしいぞ。
昨日とうとう『離宮まで来てずっと引きこもるってどんだけ気合い入った引きこもりなんですの!?』って騒いでたらしくて報告が来たんだ。」

そんな設定になっていたとは知らなかった。

フワリー嬢とやらの言う事はごく正論だろう。

「まっ用事が分かったらまた教えてやるよ。
というかキャロル、あの隠し通路が見つかる魔道具っていつ出来るんだ?」

「もう出来てますよ。」

「まじか!
なんで言わないんだよキャロル!
で?
いつ行く?」

「一応3ヵ月後の帰省シーズンに2週間で休暇申請は出してます。」

「出した後かよ!
水臭いぞキャロル!」

レオンはブツブツ言いながら後ろにある本棚に詰め込まれたファイルを漁る。

言わずもがな本棚もレオンが勝手に持ち込んだ物である。
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