似非王子と欠陥令嬢
よく話を聞いてみるとルシウスは毎朝令嬢方とお茶会をし、耐えず揉め事を報告され毎回その仲裁に入っているらしい。

レオンはレオンで毎回令嬢達に押しかけられて仕事の進まない執務室から逃げ出してキャロルの部屋に来ていたようだ。

「そんなに揉めてるんですか?」

「えぐいぞー。
言い合いから殺人未遂まで選り取りみどりだ。」

レオンが怪談を語るように言う。

「そりゃ大変ですね。」

キャロルが言うとルシウスが微笑んだ。

「朝から茶会の誘い、昼からは令嬢の媚び売り、夜は貞操の危機。
どう思う?」

「えっと、大変だなぁ…と。」

軽く同情を交えて答える。

「そうだろう?
というわけでキャロルよろしくね?」

「…へ?」


「よろしくね?」

ルシウスの言葉に頷くしかない。

蛇に睨まれた蛙とはまさにこの事だろう。

キャロルが恐怖に負け頷くと同時に部屋の扉が開く。

入ってきたメイド達がキャロル愛用のソファーを運び出し、代わりにダブルベッドが運び込まれる。

「えっ?
なんですかこれ?」

「キャロルと私のベッドだね。」

意味が分からない。

分かりたくもないが。

「今日から私ここで寝るから。」

「…は?」

「よろしくね?」

「いや…でも…。」

「よろしくね?」

「…はい。」

項垂れたキャロルを無視してルシウスの荷物が運び込まれていったのである。
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