似非王子と欠陥令嬢
それから2週間後。

キャロルはまだ悩んでいた。

既に何に使う道具を作るかは決まったが具体的な案がない。

期限が半分過ぎたのに羊皮紙は白紙のままである。

レオンとリアムも心配しているのかたまに視線を感じる。

選考日までの1ヵ月間は開発部からの仕事が入って来ない事だけが救いである。

まあそれで間に合いませんでしたとなると大目玉どころでは済まないのだが。

最悪推薦した人と部署の顔を潰したとして冷遇されたり減給となる可能性も高い。

冷遇は別に構わないがこれだけ働かされて減給なんぞ食らってはたまったもんじゃない。

キャロルが白紙の羊皮紙と睨み合っていると部屋の扉が開く音がした。

来客だろうか。

この迷路状態の頭の解消には丁度良いかもしれない。

そう思って振り返ると天使が立っていた。

「…なんだ、殿下でしたか。」

「…久しぶりに会ったのに随分な挨拶だねキャロル?」

あぁそう言えば久しぶりだっけかと最後に会った日を思い出す。

あの泥酔した夜以来ではないだろうか。

「すいません。
少し色々煮詰まってるもんで。」

「そうなの?
じゃあ煮詰まってる頭の解消がてら私の話を聞いてくれるかな?」

ルシウスの顔をチラリと見ると目の下に隈が出来ている。

…あまり良い話ではないかもしれない。

ルシウスは自分のベッドにドサッと腰掛け床を顎でしゃくる。

「色々あるからとりあえずレオンとキャロル座って。」

疲れを滲ませた声でルシウスに言われいそいそと床に正座する。

床はリアムが毛長のラグマットとクッションを置いてくれた為正座をしても痛くない。

さすがおかんである。

レオンも愛用のクッションの上で正座している。

「えっとまず、2週間前に私が君達に言った事って覚えてるかい?」

レオンと横目で視線を合わせるがお互い疑問符が浮かんでいる。

さっぱり思い出せない。

「…私はお願いだから二人共余計な事をせず大人しくしててって言ったんだよ?
そして君達を置いて父上に報告に行ったんだ。
思い出したかい?」

「あーはいはい。」

レオンは思い出したらしいがキャロルはとんと記憶にない。

この2週間でキレイさっぱり消去されたのだろう。
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