似非王子と欠陥令嬢
山の様な書物を運び終わり図書館の男性を見送ると新しい客がやって来た。

「あっすいません。
開発部からお荷物が届いておりますので確認の後サインをお願いします。」

「…はあ。」

リアムは配送員に連れられて下まで降りる。

外には配送員達とリヤカーが8台並んでいた。

「えーっと、お荷物が木箱で52箱でお間違いないですかね?」

リアムはキャロルの字で書かれた配送書を見る。

確かに52箱だ。

…何が入ってるのかは分からないが。

「あぁ。
大丈夫だと思う。」

「ではこちらにサインをお願いします。
おい裏手に資材置き場があるらしいからみんなそこに運んでくれ!」

リアムはサインをしながら次々と塔の裏に運び込まれていく木箱を横目で見る。

一体何が運び込まれているんだろうか。

漸く最後の1箱が運び込まれ配送員が頭を下げて帰るのを見送ると同時にキャロルが袋を抱えて帰って来た。

…袋が何やら動いている様に見えるが気の所為だろうか。

「あっリアム様。
荷物を受け取って下さったんですよね?
ありがとうございます。」

「あぁそれは構わないが。
それよりも」

「あっ本は届いてます?」

「あぁ本も届いて机の横に積んである。
しかしそれよりその袋」

「そうですか。
ありがとうございます。」

リアムの質問を無視してキャロルが塔の階段をスタスタ登って行く。

よく見ると頭に木の葉や枝、シャツには泥や裂けた様な穴まで開いている。

控え目に表しても汚れきっていた。

肩に担がれた麻袋もやっぱり時折もごもご動いているように見える。

一体キャロル嬢は何を捕まえて来たんだ。

…そう言えばホーンラビットの話を聞いて飛び出して行ったのだから、大きさ的にも恐らくホーンラビットだろう。

飼うなら散歩も必要だが引きこもりのキャロル嬢に出来るのだろうか。

いやそもそもあのホーンラビットをこの短時間でどの様に手に入れたのかが問題である。

内容によっては即返しに行かさねばなるまい。

まるで捨て犬を拾って帰って来た子供に対して母親が考えるであろう事を考えながらリアムも階段を上がったのである。
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