月と太陽-密愛- 【コラボ企画】
芽生えたキモチ
昔はよく二人でいた。
近所からは、仲がいい姉弟、なんて言われもした。
でもいつからか、お互い二人でいる時間は、少なくなっていった。
たぶん、朝学校に行くときぐらい。
そしたら、気付いたときには、《お姉ちゃん》から《満月》になっていた。
もうその時から、変わっていたのかもしれない。
「おい満月!ケーキ落ちたよ」
「えっ!!?あっうわーー」
陽に呼ばれてやっとのこと、私が口ではなく、顔にケーキを運んでいたことが分かった。
「さっきからボーッ、としてる」
「そうよね〜
元気だけがあんたの取り柄なのに…」
呆れた陽を横に、お母さんは生クリームがついた顔でぼやいている。
「君達失礼だから。
私はいつも通りです」
ティッシュをお母さんに渡し、残ったケーキを口いっぱいに入れる。
「…本当に何ともないのか?」
「しつこい。」
二人に聞こえないように、陽は小さな声で、渡しに耳打ちした。
「…ならいいや」
それだけ言って、陽は鼻歌混じりに、あまったご飯を皿に盛り始める。
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