月と太陽-密愛- 【コラボ企画】
「おはよ〜…」
「またあんたは陽に起こされてっ
少しはお姉さんらしくしなさい」
「はいはい。」
お母さんのため息を聞きながら、食卓に用意されたトーストを口いっぱいに入れる。
「…満月、口にカスがついてる」
「えっどこに!?」
食べている手を休め、口元をはらう。
「…ブッ…取れてないから…」
「えっ………?」
不意に伸びてきた手に驚いて、言葉を失った。
ほら、と言って陽の手には、パンのカスがのっていた。
「相変わらず仲のいい兄弟だな」
「おはよう、お父さん」
陽の行動を見ながら、お父さんは苦笑している。
何が楽しいのか分からないけど、お母さんも一緒に。
「…つうか、早くしないとまた遅刻になる」
「えっうそ!
じゃあ、いってきます」
「慌ててこけないでよね、満月」
慌ただしく鞄を持って出る、私と陽の後ろから、お母さんの甲高い声が響き渡る。
これがいつもの私たちの朝。
そして、これが最後の私たちの穏やかな生活、
だということに、まだ私は気付きもしなかった。
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