お試しから始まる恋
第1章 再会の始まりは恋人の始まりへ
「為にしに付き合ってよ・・・」
突然そう声をかけたのは、スラっとした1人の青年。
シャープな輪郭に高い鼻、口元も見惚れるくらい魅力的で、切れ長のちょっとクールな目が女性を虜にしてしまう。
彼の名前は柳田颯(やなぎだ・そう)。
一流大学を卒業して、商社に勤務しているエリートである。
家柄も良く、父親は敏腕弁護士。
母親は五年前に病死している。
2つ上の兄がいるが、結婚して身を固めている。
現在28歳の颯。
そろそろ身を固めて欲しいと父は願っているが、颯自身は恋愛に興味がないのか高校生の時以来、特定の人を作ろうとしない。
そんな颯が声をかけたのは、地味で黒縁メガネをかけた栗色の髪をベリーショートにしている女性。
丸顔で鼻も低く見え、唇も厚くて口が小さく見え、女性にしては少し背丈の大きい女性。
紺色のパンツスーツに、黒いシンプルな靴を履いている。
どこから見ても暗く、目立たないタイプである。
この女性は早杉冬子(はやすぎ・とうこ)。
普通のレベルの大学を卒業して、地味な検察局で事務員をやっているらしい?
両親を3年前に亡くして、ずっと1人で暮らしている。
地味な冬子とイケメン颯がどうして出会ったのか。
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