お試しから始まる恋
それは遡る事三ケ月前。
高校の同窓会が行われた。
総有(そうゆう)高校同窓会。
普通の公立高校で特別なわけではない、10年経って行われた同窓会では、随分変わってしまった生徒や、変わらないままの生徒や、既に結婚して子供がいる生徒もいた。
颯は高校の時から、かなり人気者で交際申し込みが絶えなかった。
10年経過してもイケメンのまま、しかも独身の颯には、同級生の女子が集まって来ていた。
冬子も同じ同級生で、同窓会に参加していたが、地味なグレーのスーツ姿で目立たない位置にいた。
颯はそんな冬子が気になり、帰りに声をかけた。
「早杉・・・だよな? お前」
声をかけられると、冬子は驚いた目をしてその場から逃げてしまった。
「ちょっと、待てよ! 」
颯は冬子を追いかけた。
だが、とても走るのが早い冬子に追いつけず見失ってしまった。
「あいつ、こんなに早く走れたのか? 高校の時は、運動音痴だったはずだが・・・」
息を切らせながら颯は見失ってしまった事に悔しさを覚えた。