お試しから始まる恋

(・・・柳田君? )

 女性の声が聞こえた。

「・・・誰だ? 」

(ごめん、私、深山ユキ(みやま・ゆき)。同窓会で会ったでしょう? )

「ああ、深山。何で俺の番号知っているんだ? 」

(宗次に聞いたの。ねぇ、柳田君、同窓会の時。最後に早杉さんに声かけたよね? )


「ああ、それがどうかしたのか? 」

(うん。他のみんなも言っていたんだけど。早杉さん、高校の時とは何だか違う気がするって言っていたの。ずっとマスクつけていたから、早杉さんの素顔をハッキリ見た人って少ないけど。なんかね・・・。それに、早杉さんがもう死んでいるって言っている人もいたの)


 言われて颯はメールを思い出した。


 メールにも、早杉冬子は死んでいると書かれていた。


(柳田君。高校の時、早杉さんから手紙もらった? )

「手紙? いや、もらってない」

(もらっていないの? 宗次と菅生君が騒いでいた事があったの。柳田君に早杉さんが、手紙を渡してきて告白してきたって)

「知らないな、そんな事」

(知らないの? 宗次、早杉さんから電話がかかって来て。高校生の時の事、覚えているか聞かれたらしいの。菅生君も、確か早杉さんから連絡があったって言っていたわ。・・・菅生君が殺されたのはその後すぐだったわ・・・)


 何を言っているんだ?

 手紙だの、死んでいるだの・・・。

 同窓会にちゃんと、冬子は来ていたじゃないか。

 それなのにどうゆう事なんだ? 


 頭が混乱してきて、颯は一度呼吸を整えた。


「・・・ゴメン。何がどうなのか、俺には分からない。手紙も受け取っていないし。・・・ただ言えるのは、同窓会で会った早杉は、早杉冬子だった。・・・それだけだ。・・・じゃあ・・・」

 

 電話を切ると、携帯電話をテーブルの上に置き、大きく息をつく疾風。



 ブ~ッ・・・メールのヴァイブが鳴った。


 しばらく考え込んで、颯はメールを見た。


(・・・颯・・・早杉が・・・2人いる・・・)

 宗次からのメールだった。
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