お試しから始まる恋

 とても短い文章で、なんだか中途半端な文面に、颯は驚いた。


「早杉が2人? 」


 なんなのだろう? 


 混乱する頭が、よけいに混乱してきた颯。



 とりあえず頭を落ち着かせる為、少し眠る事にした。



 ソファーでそのまま眠っていしまった疾風が、再び目を覚ましたのは1時間後に携帯のヴァイブ音が鳴った時だった。


 時刻は16時過ぎだった。



「はい・・・」

 少し寝起きの声で電話に出る颯。



(颯・・・)

 
 電話の向こうは宗次だった。


「宗次? どうしたんだ? 」


(・・・早杉・・・あいつ・・・2人いる・・・)

「はぁ? 何言っているんだ? 」


(・・・ゴメン。・・・俺・・・お前に隠していた事がある・・・)

「隠していた? 何をだ? 」

(高校の時・・・早杉が・・・お前に渡すはずだった手紙・・・俺が奪った・・・)


「はぁ? なんだそれ、どうゆう事だ? 」

(・・・俺は・・・早杉が・・・好きだった。・・・お前に・・・盗られたくなかった・・・)


 話をしている宗次が、苦しそうに息を切らせている事に気づき、颯はハっとした。


「宗次、なんだか様子がおかしい。どうかしたのか? 」


(・・・駅前のロッカー・・・305・・・そこに、全て残している・・・。頼む・・・)

「何言っているんだ? 今夜会うって言ってたろ? 」


(会えそうに・・・ない・・・っ・・・)


 小さく痛そうな声を漏らして、宗次からの電話が切れた。

「宗次? ・・・もしもし? ・・・」

 どうなっているんだ?

 混乱する頭で、颯が今判断できる事は、宗次が言った駅前のロッカーに行く事だった。


< 28 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop