お試しから始まる恋
とても短い文章で、なんだか中途半端な文面に、颯は驚いた。
「早杉が2人? 」
なんなのだろう?
混乱する頭が、よけいに混乱してきた颯。
とりあえず頭を落ち着かせる為、少し眠る事にした。
ソファーでそのまま眠っていしまった疾風が、再び目を覚ましたのは1時間後に携帯のヴァイブ音が鳴った時だった。
時刻は16時過ぎだった。
「はい・・・」
少し寝起きの声で電話に出る颯。
(颯・・・)
電話の向こうは宗次だった。
「宗次? どうしたんだ? 」
(・・・早杉・・・あいつ・・・2人いる・・・)
「はぁ? 何言っているんだ? 」
(・・・ゴメン。・・・俺・・・お前に隠していた事がある・・・)
「隠していた? 何をだ? 」
(高校の時・・・早杉が・・・お前に渡すはずだった手紙・・・俺が奪った・・・)
「はぁ? なんだそれ、どうゆう事だ? 」
(・・・俺は・・・早杉が・・・好きだった。・・・お前に・・・盗られたくなかった・・・)
話をしている宗次が、苦しそうに息を切らせている事に気づき、颯はハっとした。
「宗次、なんだか様子がおかしい。どうかしたのか? 」
(・・・駅前のロッカー・・・305・・・そこに、全て残している・・・。頼む・・・)
「何言っているんだ? 今夜会うって言ってたろ? 」
(会えそうに・・・ない・・・っ・・・)
小さく痛そうな声を漏らして、宗次からの電話が切れた。
「宗次? ・・・もしもし? ・・・」
どうなっているんだ?
混乱する頭で、颯が今判断できる事は、宗次が言った駅前のロッカーに行く事だった。