お試しから始まる恋
第4章 手紙の真実
楓子の家は、疾風が予測した通り、大きな門構えのあるお屋敷のような家に住んでいた。
父はパイロットで10年前に過労死している。
母は普通の会社員で事務職をしていたが、冬子の死がきっかけで体を壊すことが多くなり、3年前に病死している。
11年前に殺されてしまった冬子。
大きな家に、両親の慰霊と冬子の慰霊だけがある中で楓子は3年間暮らしてきた。
警察官として忙しくしていたおかげで、寂しさを感じた事はなかった。
高校を卒業して、大学へ進学して警察官への道を選び、楓子は冬子の事件の真相をもう一度調べ直し、自分の手で純也と宗次を逮捕しようと決意していた。
だが、冬子の交際相手の幹夫が、楓子が動きだす前に純也と宗次を調べ上げ、復讐へと踏み出していた。
楓子は何度も宗次に止める様に警告したが、聞き入れてもらえなかった。
楓子が純也に接触したのは、調べにより、純也が冬子と最後に会ってどこかに連れて行くところを目撃されていた事を問いただしていた。
純也は今更何で? と驚いていたが、事件は何も終わっていないと楓子が言うと顔色を変えた。
11年も、人を殺しておきながら何食わぬ顔をして生きてきた罪は重いと言って、楓子は自首するように勧めた。
だが間もなくして純也は自殺に見せかけて殺されてしまった。
宗次にも楓子は自首をすすめたが、宗次はやっと手にした地位を手放すことはできないと言っていた。
しかし警察が本腰を入れて再調査をすれば、嫌でも逮捕されれば、嫌でも手放さなくてはならなくなる事を警告した。
できれば自首してほしい・・・事件の真実を知りたい・・・
楓子はそう思っていた。
だが、事件は真犯人が殺されてしまう事で幕を閉じた。
結局、残された証拠と状況だけの事実しか残らないままだった。