お試しから始まる恋
最終章 結婚
それから・・・。
颯と楓子の同棲生活が始まった。
楓子は警察を退職して、しばらくは療養する形をとった。
悪阻も酷くなってゆく時期になるため、ゆったりと過ごすことにした。
颯は商社を退職することにした。
仕事ができる颯が居なくなるのは、商社にも痛手であるが、やりたい事があると言って退職を決めた颯。
颯に言い寄っていたなおは、あれから検察局に勤務する彼からは別れを告げられショックのドン底にいた。
颯に何度か言い寄ろうとしたが、上手くかわされていた。
退職の報告とともに、颯は結婚する事も公にしていた。
周りからどんな人なのか聞かれると、颯は楓子の写真を見せていた。
元刑事だった楓子の事を話し、高校生の時からずっと想っていた人だと話すと、颯の一途な思いにみんな感動していた。
なおは面白くないようだが、もうどうにもならない事にあきらめていた。
そして颯の父に挨拶に行くことになった楓子。
日頃は、仕事用のスーツしか着ていない楓子はどんな格好で会いに行けばいいのか迷っていた。
そんな楓子に颯は、普段通りで構わないからと言った。
日曜日の昼下がり。
楓子は持っているスーツの明るい色を選んだ。
優しいピンク系のスーツでスカートとセットになっている。
靴は白いパンプス。
伸びた髪は、ショートボブまで伸びて、すっかり女らしくなった楓子。
颯は楓子に合わせて、紺色のスーツで決めている。
柳田家。
ごく普通の一軒家で、弁護士事務所を開業している。
柳田 俊司(やなぎだ しゅうじ) というのが、颯の父の名前である。
1人暮らしで事務所経営をしている俊司を、事務員が支えているようである。