お試しから始まる恋
晴れて楓子は柳田楓子になった。
新居は颯の住んでいたマンションに住むことになった。
家具も揃えて新婚生活が始まる。
寝室のベッドはダブルに変えて、子供が産まれたら傍にベビーベットを置く予定にしている。
家具も新しく購入して、颯が司法試験に向けて勉強できるように勉強部屋も作った。
食器も揃えて、冷蔵庫も大きめのを買った。
「ふーっ。これで、一安心だな」
リビングのソファーに、ゴロンと寝転んで一息つく颯。
「お父さん、とっても理解のある人なんですね」
颯の傍に座って、楓子が言った。
「父さんは昔から、余裕がある人間だからな。怒られた事なんて一度もなかったよ。亡くなった母さんも、とっても穏やかな人で注意しても、大声で叱る事はなかった」
「そうなんですね。とっても穏やかなご両親に育てて頂いたんですね」
ムクッと起き上がり、颯は楓子を見た。
「なぁ楓子。そろそろ、その敬語やめないか? 俺達、夫婦になったのに、敬語で話しているのは変だし。まだ壁があるのかな? って思っちゃうからさっ」
「すみません、これは癖なんです。父がずっと、敬語で話す人だったので。母も穏やかな口調で・・・」
「楓子のお父さん、育ちがいいんだな」
「父の家系は、医師や弁護士や検事が多く。パイロットになったのは、父が初めてだと聞いています」
「へぇー。だから、お前も冬子も頭がいいんだな」
「冬子は母の血を引いていて、語学が得意で、英語はもちろん。フランス語もイタリヤ語も中国語も話せていたんですが。病気で声を失って、話せ無くなってしまったんです。私は真逆で、理数系が得意で。語学はあまり得意ではありません」
「そっか、お前達は2人で1人なんだな」
「そうですね」
他愛ない話をしながらも、2人の空間はとても幸せでいっぱいだった。