お試しから始まる恋
謝る颯を、冬子はそっと見つめた。
眼鏡を外した冬子の目は、ぱっちりとしていて可愛い目をしている。
その目で見つめられると、キュンとなる。
颯は少し照れたような目をした。
「あのさ。本当は、ずっと高校の時から気になっていたんだ。何度も声をかけようとして近づいたけど、いつも逃げられたから気持ち伝えられなかった。出会いがないわけじゃなく、他の女と付き合ってみたけど本気になれなかった。同窓会で早杉を見た瞬間。胸がキュンとなって・・・。帰り際に声かけたけど逃げてしまったから。諦められず、早杉が卒業後どうしたのか色々聞いて。検察局で働いているようだって知って、待ち伏せしたんだ。・・・ゴメン・・・」
照れながら話す颯を見ていると、何だか可愛く思えて、冬子は小さく笑った。
「・・・そんなに私を、気にかけてくれていたのですか? 」
優しい声で冬子が尋ねると、その声が心地よく、颯は嬉しくなり自然と笑みがこぼれた。
「俺、自分で想っている以上に一途なんだって知ったよ。初恋は実のならないって言われるけど。こんなに体から喜びを感じるって、そんな事めったにないから」
いつもクールな目をしている颯が、とても優しい眼差しで冬子を見つめている。
その目を見ると、おどおどしていた冬子の目が穏やかになっていった・・・。
マグカップを枕元の床頭台の上に置いて、冬子は颯を見つめた。
「試しに・・・そう、言っていましたよね? 」
「あ・・・」
颯は冬子に
「試しにでいいから、付き合ってよ」
と言った事を思いだした。
「それで構いませんから・・・。お付き合い、して頂けますか? 」
え・・・本当?
嬉しくなり、颯は潤んだ目で冬子を見つめた。
「本当? 本当にいいのか? 」
「・・・はい・・・。私、男性とお付き合いした事がありません。・・・それでも、構いませんか? 」
恥ずかしそうに、ほんのり頬を赤くして、伏し目がちで答える冬子が可愛くて、颯はギュッと抱きしめた。