俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「昨日は本当にありがとうね。ランチ、私がおごるから」
会社近くの行きつけのカフェへ入ると、昨日新野さんの事務所に書類を届けに行ったお礼をすると、愛海が意気込んで言ってくれた。
「ありがとう。でもいいよ、気持ちだけで。こういうのってお互い様だし」
「そう? じゃ、今度困ったことがあったらいつでも言って」
その言葉にうなずき、パスタランチを注文するとグラスに入った水をひと口飲んだ。昨日、あれから少し考え込んでしまい、寝つけなかった。
ぼんやりする頭を支えるように頬杖をつくと、愛海がクリッとした瞳で顔を覗きこんできた。
「今日、元気ないよね。どうしたの?」
「ううん、なにも……」
そう言いかけて、言葉を止める。愛海も新野さんの事務所へ行っていた。時間は少し違うけれど、もしかしたら涼真の姿を見たのかもしれない。
「……昨日って、もしかして気を利かせて私に新野さんのところへおつかい頼んだの?」
「え? あー、広瀬さん……いた?」
お礼を言おうかと思ったのに、愛海が気まずそうに目を泳がせるので、胸に嫌な予感が過る。
「いたけど、仕事中だったから話はできなかったよ。……女の子と楽しそうにしてた。愛海が見たときもそんな感じだった?」
あの雰囲気を知ったうえで、私にわざとおつかいを頼んできたなら愛海に失望してしまう。
「そ、それは……」
言葉を詰まらせたあと、私に勢いよく頭をさげた。