俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
こういう顔もするんだとドキリとしたのと同時に、見た目や言動が軽そうなのに、仕事には真面目に取り組んでいるんだと意外に感じる。
「今度、第二弾もあるんだよ。ぜひ来てよ。なんなら俺が案内するから」
自信満々で見て欲しそうに誘ってくれる。本当に好きで、みんなに知って欲しいようだ。
「そういう仕事っていいですね。私には全然縁がないことなので憧れます」
「そうかな。詳しくは知らないけど、百音ちゃんの仕事だって、その向こう側にお客さんがいるんでしょ。なら、一緒だと思うよ」
私が日々睨めっこしているデータの向こう側にお客さんがいる。考えたこともなかった……というわけではないけれど、直接の対応は資格のある人がしてくれていたので頭ではわかっていてもすっかり忘れていた。
数字を間違えれば試算表に響くし、決算まで気づかなければ慌てるし、それこそ決算が終わってしまえば大変なことになる。
そこにはすべてお客さんがいて、私の仕事は数字を合わせることだけじゃない。
「そう、ですね」
改めて気づいたことに自分でも恥ずかしくなり、小さくうなずく。
「ね。仕事って、なんかしら人と関わってんだよ」
広瀬さんはそう言って、焼酎を喉に流し込んだ。
説教くさく言うわけでもなく、考えられたセリフのようでもない。挨拶のようにサラッと言えるということは、普段から人との関わりを感じているからだろう。