俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「うっそ、俺のときもあんな風にさきに紹介されてたの?」
「はい、だからみんな知ってますよ。閂建設だって……」
「マジかー。だから女子の食いつき半端なかったんだ」
広瀬さんは頭を押さえてうなだれた。女性たちが自分に興味津々だったのは自覚があったらしい。
その女性たちの興味は、もう私の隣に座ったまま動かない広瀬さんではなく、新しいメガバンクの男性に向いている。
「すみません、遅れました」
頭を下げて現れたのは、仕立てがよさそうなスーツをスマートに着こなした背が高い男性だった。精悍といった言葉がピッタリな目鼻立ちがしっかりした爽やかな容姿で、体格がよく、銀行という職業を知ってしまったせいか信頼感と安心感があるように見える。
「はじめまして、上崎洸太(かみざきこうた)です」
それだけ言うと女性たちのことは一切見ることはなく、幹事の男性に挨拶をして入り口そばの空いていた席へそそくさと座った。
広瀬さんとは真逆の女性慣れしていないタイプ。だけど、愛想が悪いわけではなく、話しかけられればきちんと真面目に応えている。好青年で仕事も安定、充分魅力的だ。
だけど、過去に出会ったああいったタイプの男性で、付き合う前にまずは母親に見てもらってから……と言われたマザコンの人もいた。
その人と、いま現れた上崎さんはまったくの別人。同じであるはずがないのに、つい誰かと誰かを重ねてしまう。
もう失敗はしたくないからとはいえ、過去のことをいちいち思い出す自分に嫌気がさしてきた。無性に飲みたくなってきて、焼酎のグラスをグッと煽ると次の飲み物を注文した。
「いい飲みっぷり。じゃ、俺もおかわりしよ」
私に釣られたのか、広瀬さんも注文すると一緒に何杯か飲んだ。