俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛


タクシーに乗り込んでから十五分ほど走ると、シティホテルの前に到着した。広瀬さんはチェックインの手続きを済ませると、私の肩を抱き寄せた。

「寄り掛かってていいよ。しんどいでしょ」

エレベーターで十一階に到着すると、部屋の鍵を開ける。ドアを開くとそこはベッドとドレッサーしかないシンプルな部屋で、ほのかに間接照明がついていた。

「これ、飲んで」

立っているのがしんどかったのでベッドへ腰かけると、広瀬さんが冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、蓋を開けて渡してくれる。

「ありがとうございます……ん、……っ」

思ったより喉が渇いていて、勢いよく飲んでいると口の端から水が零れてきた。拭き取ろうとすると、広瀬さんがそっと頬に手を添えて、唇で拭ってくれる。

「っ、広瀬さっ……ん……」

優しいキスが降り注がれ、体の芯がじんと熱くなる。唇を食まれ、ゆっくりと開けられると熱い舌がくすぐるように中へ入ってきた。

「百音ちゃん……つらかったら、言って」

「ん、ぁっ……」

舌を軽く吸われると甘い痺れが走り、喉から声が漏れる。体が倒れそうになると、背中に腕を回して力強く支えてくれた。

「大丈夫?」

様子を窺うように私の顔を覗き込み、頭を撫でてくれる。

「少し、しんどくて……」

「わかった。じゃ、俺に任せてくれたらいいから」

口角を上げて穏やかに微笑むと、私を気遣いながらそろそろとベッドへ寝かせてくれた。

広瀬さんなら、大丈夫。この人なら優しくしてくれるのかも――。

そんなことをうっすらと思いながら、私の意識は酔いとともに甘く溶けていってしまった。


< 28 / 123 >

この作品をシェア

pagetop