俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛


――そういえば、昨日は飲み過ぎったのだった。

「なにやってんの、百音ちゃん」

ホテルの壁で頭を打ちつけたあと、ぼんやりとしたままだった私に広瀬さんが笑いかけてきた。

たしかに、この眩しい笑顔は覚えている。夢の中の王子様はもう少し穏やかな感じはしたけれど。

「あ、いえ、その……昨日はご迷惑をおかけしました」

酔っぱらったことを思い出し、恥ずかしさいっぱいで頭をさげる。

「いや、いいんだけど。百音ちゃんはなんにも覚えてないの?」

「え、覚えて……?」

なにかあったっけ? なにをしたっけ? 服装の乱れもないし、ストッキングだってちゃんと履いてるのに?

目を丸くする私の顔を、広瀬さんがマジマジと覗きこんでくる。お風呂上りなのか、髪が湿っていて昨日より肌艶がいい。それに、シャンプーのいい香りがする。

「甘い、一夜を過ごしたんだけどな」

艶っぽく唇に弧を描いて、瞳を細めると、私の顎を優しく持ち上げた。

「覚えてないなら、思い出させてあげようか」

「ひ、広瀬さん……?」

うろたえる私の唇に、ゆっくりと自身の唇を寄せてくる。しかし、あと数ミリで触れてしまうというところでピタリと止まった。

「……なんてね。大丈夫、最後までしてないから」

さきほどまで醸し出していた色気はどこへいったのか。途端に太陽みたいな明るさを取り戻すと、私からあっさりと離れた。

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