俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「じゃあ、ぜひ。実は私もこれからなにか食べて帰ろうかと思っていたところだったんです」
笑顔を向けると、上崎さんは少しだけ口元を緩めた。
「そうですか、よかった。それじゃ、和食はいかがですか? このあたりで、よく行く店があるんです。味もおいしいです」
上崎さんの提案にうなずくと、ふたりで並んで歩きはじめた。
会話をするときは見上げなくてはならず、つい通った鼻筋とくっきりとした二重に目がいってしまう。
「あの、そんなに見られると……っ、危ない!」
私の視線を感じた上崎さんが恥ずかしそうにこちらを見てきたと思ったら、私の腕を力強く引いた。上崎さんを見ていたせいか、前から歩いてきた人に気づかずぶつかりそうになっていたところを助けてくれたのだった。
「っ、すみません。私、全然気づいてなくて」
「いえ。……しっかりしているとばかり思っていたので、意外な一面が見えて嬉しいです」
口元に手を当ててクスクスと笑いだす。
「そんな、しっかりしていないですよ。……まぁ、かと言ってドジだとも思っていませんけど」
「ドジだとは言っていません。かわいらしい一面……と言いますか」
そこまで言うと、わざとらしく咳払いをして言葉を濁した。好意をなんとなく伝えてくれる会話のやりとりはくすぐったく、気分が一気に仕事モードから恋愛モードへ変わっていく。
「あそこのお店です。よく上司と来るんですよ」
そう言って、上崎さんが指さしたお店は交通量が多い大通りから一本奥に入ったところにある、小さな看板に明かりが灯ったお店だった。あまりにもひっそりとしているので、意識をしなければ見逃してしまいそうなほどこぢんまりとしている。