俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
引き戸を開けて木造の店内へ入ると、照明が絞られていて薄暗く、お客さんも品のいい感じの人ばかりでとても落ち着いた雰囲気が漂っている。
ちょうど窓際のテーブル席が空いていたのでそこへ案内してもらい、上崎さんはさっそくメニューの飲み物がズラリと並んだページを開いた。
「この前、よく飲まれていましたし、お酒はお好きなんですか?」
「人並みです。あのときはちょっと飲みたい気分だっただけで……あと、広瀬さんが飲ませ上手だったんですよ」
広瀬さんと飲んだどこにでもあるような焼酎を思い出し、つい頬が綻んでしまう。どうしてだか、何度も飲んだことがあるものだったのにとてもおいしく感じた。
「広瀬さん、イケメンでしたね」
「なに言ってるんですか、上崎さんも充分イケメンじゃないですか。女性陣からすごく人気でしたよ。気づきませんでしたか?」
私は上崎さんのほうがタイプです……とはさすがに言えない。喉の奥に言いたい言葉が引っ掛かったまま、微笑んでみせた。
「お、お世辞はいいですから。なにか飲みましょう。僕も飲みたい気分です」
恥ずかしくなってきたのか、話を逸らすと焼酎と日本酒のページをかぶりつくように見ていた。
結局お酒はお店の人に聞いて、注文した料理に合うものを用意してもらうことにした。
料理は薄味なのにしっかりと旨味があり、出汁の味もとてもおいしくて、好きな味つけのものばかりだった。お酒もおいしく、本当はもっと飲みたいところだけど前回のタクシーで広瀬さんに送られるという状況を見られているだけに、今度は失態を見せられないと量をセーブした。