俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「そんなわけありません! 広瀬さんは送ってくれただけですし、ましてや外見とかお酒好きだからって、簡単にホテルに行くような女だなんて決めつけないでください!」
声を荒げ、上崎さんがひるんだすきに手を振りほどいた。
「失礼します!」
食事前まではうっとりとした気分で見上げていた精悍な顔を、腹立たしい気持ちいっぱいで睨みつけ、全力でその場から走り去った。
見た目が派手だということ、お酒が好きで、さらに酔い潰れて出会ったばかりの男性にタクシーで送ってもらっている。この要素から上崎さんは私が遊び人だとカテゴライズした。
「そんなんじゃないのに……」
駅へ着くと改札を抜けて、ホームの柱のそばにしゃがみ込んだ。そばにいた人が、吐くとでも思ったのか私から離れていく。
怒りが落ち着いてくると、段々と悲しい気持ちになってきた。
人を決めつけるなんてヒドイ。……だけど、私もそういう風に人を見た目や肩書き、言動や仕草から決めつけていた。
「広瀬さんにも……悪いことした」
私に手を出さなかった広瀬さんに「意外」と言ったとき、悲しそうな顔をした意味がやっとわかった。いまの私と一緒だ。
本当に軽いならともかく、誰だって遊び人と思われて気分がいい人はいないだろう。
「ごめんなさい……」
小さく呟き、バッグからスマートフォンを取りだすと連絡先から広瀬さんの名前を選んだ。
いますぐ謝りたい。広瀬さんのことだから「気にしてないよ」と笑ってくれそうな気もするけれど、ちゃんと謝って、お詫びに食事でもごちそうして……。
そう考え、電話番号をタップすると耳にあてた。コール音が何度か響き、プツリと途切れる。