俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
『え? 百音ちゃん? どうしたの?』
私からの突然の電話に驚いた声が聞こえてきて、整っていた呼吸がちょっとだけ乱れた。
「あっ、あの……この前のこと、謝りたくて」
『え? なに?』
周りが騒がしいのか、聞き取りにくそうに聞き返される。
「この前のことを謝りたいんです」
『この前のこと?』
どこかのお店にいるらしく音楽とガヤガヤと騒ぐ人たちの声が聞こえてきた。とりあえず手短に謝るだけ謝って、それから……。
「広瀬さんを軽い人だなんて決めつけてしまったことです。そんな風に思われたら、嫌な気分になりますよね。あのときは本当にすみませ……」
『ちょっと、広瀬さーん! 早くこっち~』
『電話なんか放っておいてよぉ! 私たち待ってるんですけどぉ』
私の謝罪にかぶり、電話の向こうから女性たちの甘ったるい声が聞こえてくる。思わず言葉が途中で出なくなった。
『百音ちゃん? ごめん、あんまりよく聞こえなくて』
聞き返してくる広瀬さんの声より、電話の向こう側に耳を澄ませてしまう。
『一番の人と、二番の人がキス~!』
遠くでそんな声が聞こえたと思ったら、電話口に広瀬さんが口を開いた。
『やっべ、俺一番だ』
私と通話していることを忘れているのか、それとも気にしていないのか。なんの躊躇も焦りも照れもなく、早くいかなきゃ感をだしてくる。
『で、なんだっけ。百音ちゃん』
「……いえ、なんでもありません」
『なんでもないの?』
「やっぱり私のカテゴライズは正しかったということで」
なんだろう、この期待を裏切られた感は。通話終了ボタンをタップする指に、妙に力が入ってしまった。