俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「でも、電話ってどうしたの? 用でもあったの?」
頬にかかった髪を耳にかけ、少し気を取り直したようにたずねてくる。愛海のまっすぐな瞳に、広瀬さんとのあれこれを見透かされそうでリゾットを食べることで視線から逃れた。
「ううん、送ってもらったお礼をもう一回言おうかと思っただけ。あのとき、酔っててちゃんと言えなかったから」
ホテルに行っていないことになっているし、“軽そう”という発言を本人にしてしまったことも言っていない。
笑って流すと、愛海も「ふーん」と気にしていないようだった。
「ねぇ、それより! 昨日、上崎さんと会わなかった?」
「ああ、そういえば……」
そういえばそんなことがあったんだった。広瀬さんの件ですっかり忘れてしまっていた。
「会ったよ。会社から出たらいたんだよね。愛海、上崎さんが来てたこと知ってたの?」
「ううん、知ってたわけじゃなくて、私が会社出たときに上崎さんがいたのよ。百音がまだ会社にいるか確認されたから、連絡入れようかって聞いたんだけど、それはしなくていいって遠慮されたんだよね。で、どうだった?」
サラダを食べ終えた愛海が身を乗り出してたずねてくる。さきほど広瀬さんのことで残念そうにしていた表情は、もうどこにもない。
「どう、って……」
わくわくしている愛海の期待には応えられそうもなくて、一瞬言うのをためらってしまう。