俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「私も、もう一度広瀬さんと話がしたいと思っていました。……あと、謝りたいと思っていたので」
それに試しにふたりでデートをしてみたい。あくまで試しに。本気じゃなく。
もう広瀬さんのことを軽いなんて思っていないはずなのに、傷つきたくなくて自分に言い訳する。
『え? 俺、なに謝られるの? まぁ、いいか。いつなら大丈夫そう?』
「いまはあんまり予定入ってないのでいつでも。……今日でも大丈夫なくらいです」
『マジで? じゃ、今日行こう! 俺も早く終われて、いまから帰るところなんだ』
電話越しにも広瀬さんのテンションがあがったのがわかる。私の返事でそうなってくれているのなら嬉しい。
ふた駅ほどさきのところで待ち合わせをすることになり、電話を切った。
電車へ乗り込む前に駅のトイレへ行き、鏡を覗き込む。たいして乱れてもいない髪に崩れてもいないメイクだけど、なんだかものたりなくてファンデーションを重ね、ついでにマスカラとグロスも上塗りした。
ちょうどやってきた電車に乗ると、スマートフォンを取り出して検索をはじめた。打ち込んでいる文字は“二回目 お誘い 見極め”。
広瀬さんが本当に軽くないのか、私のことをどう思っているのか。この食事で見極められるなら見極めたい。早ければ早いほど、期待せずにすむから。
……あれ? 期待って……なんの? もしかして、もう広瀬さんになにか気持ちが芽生えてしまったのか。
画面をスクロールしていた指がふと止まる。何気なく見た電車の窓に映り込んでいたのは、いつもより濃い目のメイクをした自分だった。