俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
駅につく間に三つほどの記事をササッと確認し、到着するとスマホをバッグにしまった。
車内も混雑していたけれど、駅についても人がかなり多く、仕事帰りの人もいれば私と同じように待ち合わせをしているのか立ち止まって腕時計を確認している人もいる。
どこにいるのだろうかと、待ち合わせらしき人たちが立っている壁際をくまなく見ていると、正面から「百音ちゃん」と声が聞こえた。
「百音ちゃん、こっち。目の前」
広瀬さんは改札から出た正面に立っていて、私に向かって大きく手を振ってくれていた。存在だけで充分目立つというのに声も大きく、何人かがチラチラと広瀬さんと私を見ていくのがわかった。
「まさか真ん中で立っているとは思いませんでした」
時折向けられる視線が恥ずかしく、ちょっとだけ顔を隠しながら広瀬さんへ近づく。彼はまったく気にしていないようで太陽みたいに明るく笑っていた。
「真ん中のほうがわかりやすいでしょ。あ、大丈夫。ちゃんと邪魔にならないように百音ちゃんが来るまでは隅っこでいたから」
「ちゃんと配慮してたんですね」
ずっと真ん中で立っていたわけじゃないと聞いてホッとしたと同時に、弁明みたいに話す広瀬さんをちょっとだけかわいいと思ってしまった。
「そういえば、食べたいものってある? なければ、俺が選んじゃうけど」
食べたいものを訊いてくれただけでひとまず二回目の食事は合格ライン。やっぱり、悪い人じゃない。