俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
広瀬さんのセレクトか。特に食べたいものはないし、ここは任せて広瀬さんのプライドを尊重し、なおかつ好みや私への配慮を見るのもありかもしれない。
「じゃあ、広瀬さんにお任せします」
「わかった。スペイン料理でも大丈夫? 食べられないものがあったら言ってね」
「なんでも大丈夫です。スペイン料理なんてあんまり食べないので、嬉しいです」
任せたからには男性のセレクトを決してけなさない。基本中の基本だ。
「よかった。それじゃ、ちょっと店に電話してみる。とりあえず歩こうか」
そう言って、歩きながら電話をはじめ、予約を取ってくれた。
三分ほど歩くと、七階建てのモダンなビルが見えてきた。エレベーターへ乗り込むと迷わず三階のボタンを押し、広瀬さんは階数の表示に目をやる。
このオシャレなビルには居酒屋もなければ、お手頃な値段のイタリアンもカフェもない。しかも到着予定の三階は一級品の素材ばかり使ったスペイン料理のお店だったはず。前にテレビで紹介されたとき、行ってみたいとヨダレを垂らして観ていたところだ。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
本当にいいんだよね?と思いつつも確認できず、降りると広瀬さんが店員に名前を告げた。そのまま奥にある衝立で区切られた半個室の席へと案内された。