俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「すごく雰囲気がいいお店ですね」
テレビで観ていたとはいえ、実際に感じる店内はもっと居心地がよくてオシャレだった。樹海をイメージしたらしく、ライトは無数の穴が開いた天井の裏に取りつけられていて、まるで木漏れ日のような灯りがテーブルを照らしている。
「このビル自体もなんだけど、この店も先輩が照明の設計をしたんだ。普通のおじさんなんだけど、見かけによらず繊細なデザインするんだよね」
先輩の顔を思い出しているのか、クスリと笑うとメニューを広げた。料理名だけではイメージがしづらい名前が並び、その下に小さく説明が書かれている。
「どれも美味しそうなんですけど、なかなかイメージしにくいですね」
メニューを見ながら首を傾げていると、広瀬さんの指が伸びてくる。
「店長さんのオススメはこれとこれ。料理長のオススメはこれ。俺はこれが好き。百音ちゃんはこれが好きなんじゃない?」
次々と指を差されるメニューを目で追っていくと、もうひとつのコースが出来上がっている。しかも、私の好みまで把握されていた。
「なんで、私の好きなものがわかったんですか?」
「この前の飲み会のときも、さっぱりしたのが好きそうだったし、あとお酒も飲めるからこういうテイストが好きかなって」
「なるほど」
飲み会のときから好みを見られていたとは思わなかった。私への配慮は合格……なんて、とんでもない、嫌味なところもなくて自然なエスコートなので花丸をつけたいくらいだ。