俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「じゃあ、それでお願いします」
「了解」
いいタイミングでやって来た店員に注文すると、すぐにワインが運ばれてきた。乾杯すると、ひと口飲む。
「ワインもいけるの?」
「まぁ、大抵のお酒なら。広瀬さんもですか?」
「お酒に限らず、料理もなんでもおいしく食べられるかな。嫌いになるほどまずいものなんて、この世にないよね」
まるで本当に嫌いなものに出会ったことがないかのように言うと、もう一度ワインを口に運んだ。
好き嫌いが少ない男性は、人の好き嫌いも少ないと誰かに聞いたことがある。広瀬さんらしい。
「すごくメニューに詳しいですけど、このお店はよく来られてるんですか?」
まさか、女性を口説くための店だったらどうしよう。口説かれるのはいいとして、頻繁に利用しているようだったら考えものだ。
「いや、客として来たのはこれで二回目くらいかな? そのときは、友達と来たけど。たまたま飲んでるときに、ここの店長さんと仲良くなったんだよ」
「たまたま……」
「よくあるよ。隣で飲んでる人とか、よく行くコンビニの店員さんと仲良くなったり。電車とかバスで隣に座っただけで、話が盛り上がっちゃうことってあるでしょ」
「ないです、普通は」
そもそもどうやったら席が隣になっただけで会話がはじまるのかさえわからない。
「そう?」
広瀬さんは不思議そうに目を丸くする。そうしていると料理が運ばれてきて、ウエイターさんの料理の説明が終わったあと、どうやって食べたらおいしいか、ウエイターさんのオススメはなにか、などたわいない会話もしていた。きっと、こうやって人と仲良くなるのだろう。