俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「送ってくれてありがとう。このマンションが私の家だから」
店から出るとタクシーを捕まえて、私の家まで送ってくれた。
タクシーの中で、ひざに置いていた手を少しだけ握られた。その温もりがまだ残っている。あのまま、ドライバーが話しかけてこなければ、ずっと握ってくれていたかもしれない。
「俺も、ここから電車でひと駅だから近いんだよ。全然、平気」
そう言ってタクシーの代金を支払ってしまう。家までは電車か、歩いて帰るらしい。
「ご飯もごちそうさま。おいしかった」
照れくささではにかむと、広瀬さんは夜には不似合な爽やかな笑みを浮かべた。
「喜んでもらえたならよかった。俺、百音の笑顔が好きなんだよね。たぶん、新野さんの事務所で見かけたときも笑っててそれで気になって……この前の飲み会でさらに惹かれたんだ」
「あんまり、言われたことないけど」
「そう? 周りを華やかにする笑顔だよ。……いつも俺の隣で笑っててほしいなって思った」
涼真の表情が爽やかさから一気に夜の色っぽい顔つきに変わる。瞳が街灯で濡れているように光り、私をじっと見つめてきた。
この人のコロコロ変わる表情に、これから振り回されそうな予感がする。
「百音……」
名前を小さく囁くと、顔を近づけてきて唇にキスをくれた。
「んっ……」
柔らかく触れると、包み込むように甘く食んでいく。あえかに息を漏らすと、その隙間を埋めるかのように舌を割り入れてきた。
「ん、ぁっ……」
自分では制御できない甘ったるい声が漏れる。涼真の舌が私のそれに絡み、じゅっと吸い上げるとすぐに離れた。