俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
店内がほの暗いのにはムードだけではなく、こういう理由があったのだ。注文したジントニックはブルーライトが当てられ、中の氷が地球のように光っている。
メインで運ばれてきた牛タンのローストは黒いお皿に盛りつけられていて、炎で焼かれているような映像が映し出されたり、ウニのソースがかけられたウナギのパイ包みはアニメーションが流れたりとさまざまに楽しめた。
「見た目だけじゃなくて料理もおいしいし、こんなに特別な空間なのに居心地もいいし。んー、幸せ」
牛タンを頬張り、あまりの美味しさに目を閉じて味わっていると、クスッと笑う声が聞こえてきた。
「百音って、なんでも楽しむよね」
目を開けると、涼真がそれこそ楽しそうに肩を揺らしながら笑っている。
「なんでもって……そうかな?」
どちらかというと冷たい印象を持たれることが多いし、気持ちも冷めていることが多い。でも、涼真と出会ってからは笑うことが増えたかもしれない。
「たぶん……なんでも、楽しいから」
興味がなかったサッカー観戦も、考えたこともなかったサイクリングデートも、全部涼真とするから楽しい。
ただ、なんでも楽しいなんて子どもみたいで、恥ずかしかったので小声で答えると、涼真が優しい眼差しを向けてくれた。
「そういうところがいいんだよね」
何気なくそう言って自分も牛タンを頬張ると、私と同じように「うっまー」と目を閉じて味わっていた。その姿を見て、今度は私が涼真のようにクスクスと笑いだす。
これで、いいのかもしれない。