俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
こんなにも週末が待ち遠しいのはいつぶりだろうか。
涼真に愛された余韻とともに出勤していると、改札を抜けたところで後ろから「おはよう」と声をかけられた。
振り向くと、ふんわりスカートに春色のシャツを合わせ、長い睫毛をきれいにカールさせた愛海がいた。この前見たハイブランドのバッグは同じくらいの値段がしそうなべつのものに代わり、パンプスまで新しいブランドものに変わっていた。
「おはよう。あれ、愛海も寝坊?」
今日、幸せな週末の余韻を引き摺り過ぎたのか、少しだけ寝坊してしまい、いつも乗っている電車を一本ずらした。愛海とはいつもの電車のときに会っていたので、私と同じく一本遅れたのかもしれない。
「寝坊~。ていうか、百音に言わなきゃいけないことがあって……」
愛海が深刻な顔で私の耳に唇を寄せてくる。まだ駅を出たばかりで多くの人がいるし、知っている人がいても話を聞かれることもなさそう。
「どうしたの? そんなに大事なこと?」
「なんか……あんまり大きな声で言いたくない」
言いにくそうにする愛海に、彼氏ができたなどのいい報告ではないと察して耳を近づけた。
「実は、笹倉さんに食事に誘われたの」
「へっ!? さ、笹倉さんって……あ、あのっ、あの笹倉さん!?」
「シーッ! 声、大きいって! もしかしたら、事務所の人がいるかもしれないんだから!」
笹倉さんの名前を繰り返す私に、愛海が人差し指を唇に押し当てた。