俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
たしかに、ここは事務所の最寄り駅。事務所の人どころか、笹倉さん本人がいる可能性だってある。
「ご、ごめん。だって、まさか笹倉さんの名前が出ると思ってなかったから」
「私だって、まさかよ。百音がアドバイスしたんでしょ? 食事はストレートに誘ってみたらいいって」
「い、言ったよ。言ったけど……まさか、愛海を誘うなんて知らなかったから」
ということは、笹倉さんの好きな人は愛海ということになる。
可愛くて女性らしいし、よく気も利く。私と同じく資格はないものの仕事もできるし知識も豊富だ。
惚れる男性社員がいないことが不思議だとは思っていたけれど、まさか私たちのことを嫌っているとばかり思っていた笹倉さんが愛海のことを好きだったとは思わなかった。
「で、でも笹倉さん、いいんじゃないの? 顔もスタイルもかっこいいよ! 税理士だから仕事に困らないし、真面目だし、私たちにはともかくお客さんからはすごく頼りにされてるし」
不思議なことにお客さん相手となると緊張しないのか、優しくて頼りになる税理士さんとして好かれていた。
普段あまりしゃべらないし、地味な色のスーツが多いから目立っていないけれど、眼鏡の奥の瞳は涼しげで、鼻筋も高い、整った顔立ちをしている。
士業というだけで寄ってくる女性もいるけれど、そんな女性になびくことなく、笹倉さんは遊ばず、真面目に仕事だけをしている雰囲気だった。
「全然よくない! まともにしゃべったことないし、メッセージのやり取りもずぅーっとずぅーっと敬語でつまんないもん。肩凝っちゃう。もうやめたい」