俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
連絡先はなにかあったときのためにと事務所の中で全員と交換しているので、笹倉さんは誘い方だけを迷っていたらしい。
「メッセージ、ちゃんとやり取りしてるんだ」
イヤと言いつつも、きちんと相手を知ろうとしている愛海が微笑ましくて口元が綻んだ。
「そりゃ、一応……。百音の言う通り、顔もよくて仕事もちゃんとしてて、真面目っていう優良な旦那候補だからね。でも、無理かなぁ……やっぱり」
ため息を零す愛海を、応援するべきか、ほかを探してみようというべきか迷っていると事務所に到着した。
「はぁ……笹倉さんが広瀬さんみたいだったら、言うことないんだけどな」
「えっ、涼真? なんで、そこで涼真が出てくるの」
「ごめーん。あまりにも百音がうらやましくって」
愛海は少しだけ笑って、ロッカーに荷物を置くとさっそく掃除の準備をはじめる。
「あ、でもさぁ……百音も気をつけないと。広瀬さんに寄ってくる女の人っていっぱいいると思うから」
それだけ言うと、所長のデスクを拭きはじめた。
「それは、そうだけど……」
一般的に涼真はモテる。本人も自覚しているくらいに。ただ、いまはそんな不安がないくらい、私と向き合ってくれていると感じていた。
「大丈夫だよ、きっと」
愛海には聞こえない声で言うと、給湯室の準備をはじめる。朝の時間は慌ただしく、すぐに就業時間となってしまった。