俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
会社の最寄り駅から十分ほど電車に乗ると、洗練されたデザイナーズハウスやセンスがいいショップなどが立ち並ぶ駅で降りる。ここを歩く街の人たちも自分らしさを残しつつ流行も取り入れていてオシャレで、街全体が誰かにデザインされているみたいだ。
そんな街中でもひときわハイセンスで目を引く事務所が、新野デザイン事務所だ。真っ白な四角い建物に控えめな事務所名がアルミかなにかの金属で書かれている。
南には大きな窓があり、ところどころについた小さな窓も太陽を取り込むためのものか、昼間に事務所へお邪魔したときにすごく明るい部屋だと感じた。
事務所のチャイムを鳴らし、「真淵税理士事務所です。すみません、ひとつお渡しする書類が漏れていまして……」と言うと中へ入れてくれた。
「お世話になります。こちらがその書類です」
応対してくれた女性に書類を渡していると、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「えー、こなっちゃん。そこは違うでしょ。俺は、こっちから照らしたほうがいいと思うけどな」
応接室ではなく、事務所の開かれたスペースで大きなテーブルを前に涼真と背が小さな女性、それと新野社長が話し合っていた。
整いすぎて強面にも見えてくる新野社長の顔は、いつも無愛想で崩れることがないと思っていたのに、いまはニコニコと見たこともない朗らかな笑顔を浮かべている。
「私はこっちからがいいと思います。エントランスはやっぱり正面から……」
元気よく涼真に意見している女性には見覚えがあった。以前、涼真と飲み会で知り合う前の昼休みに、一度ぶつかったときに一緒にいた女性だ。