俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛


「いま、大きな会社のリニューアルを閂建設さんとコラボで任されているんです」

私があまりにも涼真のほうを見ていたので、女性がこっそりと教えてくれた。

「どこの会社か、とかは言えませんけど。あ、でも真淵先生のところなら、そのうち書類などでわかっちゃうかもしれませんね」

「いえ、私は担当じゃないので」

資金繰りの相談などに乗ることで、その会社のこれからの仕事を知ることはある。だけど、ほかに漏らさないのが税理士。情報の共有は大切だけど、そういった税に関係のない情報は回ってこない。

「待って。俺の中でシミュレーションする」

「それならパソコンでやりましょうよ。そのほうが確実です」

小柄な女性がパソコンで操作をし、その画面を覗き込む涼真は「なるほど」とうなずいていた。仕方ないこととはいえ、ふたりの距離が近くて気になってしまう。

涼真の仕事ぶりは電話で対応しているところしか知らない。同じ職場じゃないし、業種も違うので当たり前だけど、こうしてほかの女性と触れあっているところを見るのは、あまり気分がいいものではなかった。

「それでは、失礼します」

仕事中の涼真を邪魔しないよう、小声で挨拶をして立ち去ろうとしたとき。

「やっぱ、いいね。話が合うって。同じ仕事してるのって大きいよなぁ」

楽しそうな涼真の声が聞こえてくる。振り返ると、小柄な女性の肩を叩きながら、笑っていた。

私は、涼真の仕事を知らない。あんまり、そう言った話もされていない。

気にすることはないとわかっていても、その言葉がトゲのように胸に引っ掛かった。


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