俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
お試し6:本気の愛
いま見たものは浮気現場ではない。明らかに仕事現場で、話の内容だって漏れ聞こえてきた程度。
「でも、あんなに楽しそうに話さなくたって……」
自分の部屋へ帰り、玄関のドアを閉めると自然と口から零れでた。そのままドアへもたれかかり、ズルズルとしゃがみこむ。
「どうせ、照明の話なんてわかんないよ」
建築の話もわからないし、建物のこともまったく知らない。私たちの共通点なんて、お酒が好きだということくらいだろう。
一緒にいたいからいると言ってくれた。なのに、それを信じずにまた深く考えてしまうなんて、我ながらバカだと思うし、こんな面倒くさい性格をしていたのかと改めて気づく。
「あの子と仲いいんだ……」
同じ職場とはいえ、あんな風に冗談も言い合える仲になるものなのかと不思議になる。
私が勤めているところでは到底考えられない。礼儀だけでなく上下関係に厳しいし(先日、誤解は解けたけれど)笹倉さんのように怖い人はまだいる。
もっとも、涼真だからこそ仲良くなれるのかもしれない。人たらしもいい加減にしてほしい。ヤキモチなんて、できれば妬きたくないのに。
「あー、考えるのやめよう」
勢いよく立ちあがるとパンプスを脱いですぐにキッチンへ向かう。ダイニングテーブルのイスにバッグを置くと、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、喉を鳴らして飲んだ。
気分がスカッと晴れていく気がする。