笑顔でいいの?
圭ちゃんは……お兄ちゃん。
「咲、お疲れ。」

カラン、コロン

明るい音に誘われて

間接照明だけの薄暗い店内に、足を滑り込ませる。

ホンの数ヶ月前まで

このドアにカウベルなんて、ついていなかった。

『咲が帰って来たのが分かるように。』

そう言って、先週圭ちゃんがつけたの。



聡兄の言葉を思い出して落ち込む私に

探偵のような仕事を

洋ちゃんと笹兄と3人でやってると、先週話してくれた。

それから直ぐ

裏で話し合うこともあるからと

帰って来た私が淋しくないように、つけてくれたんだ。

『おかえり。』

その一言を私に言うために。
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