笑顔でいいの?
聡兄。

家族に疎まれていた私の、唯一の理解者だった。

親子3人、病院で食べる夕ごはん。

そこに、私の居場所はないの。

心臓の悪い咲々を気遣い、お弁当を作って毎日一緒に食べていた3人。

私は一人、家政婦さんの作ったご飯を温めて食べる。

小学1年生までは、食べるのを付き合ってくれた家政婦さんも

学校の帰りが遅くなってくると、待っててもらえなくて一人になった。

そんな私に

「咲、ウチ来る?」って誘ってくれるのは

隣に住む5才上のお兄ちゃん。

子供部屋の電気しか点いてない家を、心配しての行動だったけど

淋しさに、膝を抱えた私には

クリスマスのサンタクロースのような存在だった。

聡兄に恋をしたのは…………いつだったんだろう。

それすら分からない程自然に好きになっていた。

漫画で見かけた告白シーン。

多くはバレンタインのチョコレート。

「好きです。
付き合って下さい。」

可愛い服を着て、少しはにかんで告白すると

100%の確率で成功し

そこから先は、離れることなくずっと一緒に居られた。

一人になることなくずっと…………。

『これなら私も淋しくならない。』

好きの裏には、そんな思いもあったのかもしれない。

6年生のバレンタイン。

私は、聡兄に告白した。

成功して、ずっと一緒にいられることだけを信じて。

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