今宵、貴女を頂戴します〜探偵VS怪盗〜

イギリスの首都、ロンドン。そう、誰もが一度は聞いたことのある名探偵の国。

その名探偵は小説の中だけしか登場しない。しかし、現実の世界で「女性のシャーロック・ホームズ」とメディアが取り上げる十六歳の女性がいる。

雨の降る夜の館。名探偵は緊張する面持ちの容疑者たちと、名探偵の推理を聞く刑事たちの前に立つ。

「マーガレットさんを殺害したのはーーー」

漆黒の髪と、美しいペリドットの目が犯人を見つめる。

「あなたです。…ハリーさん」

犯人は罪を認め、刑事に連行されていく。その様子を見ていた人々は心の中で呟く。

明日の新聞やテレビは、彼女のことがまた報じられるのだろう。

彼女の名前は、アリス・リン・アドラー。高校生にして数々の難事件を解決に導いてきた名探偵である。



「またお姉ちゃんのこと、テレビでやってるよ！すげぇ！」

朝ごはんを食べながら、アリスの弟二人が興奮する。

「あれくらいの事件、あなたたちでもきっと解決できるわ」

アリスは紅茶に口をつける。イギリス人は紅茶が好きなようだが、半分しかその血が流れていないアリスも紅茶が大好きだ。