今宵、貴女を頂戴します〜探偵VS怪盗〜
ミステリー小説の棚をアリスが軽く押すと、棚は抵抗することなくくるりと回る。忍者屋敷のようなどんでん返しになっているのだ。

「扉…!」

どんでん返しの先に、鉄でできた頑丈な扉があった。パスワードを入れないと開かないようだ。

『さあ、パスワードを探してください。パスワードはこの書斎のどこかにあります。ただし、探すことができるのは、一つの本棚のみです』

そう書かれた紙が貼られており、その下にクイズが書いてあった。

「1989」

その数字の下に、青い花びらが貼り付けてある。

アリスはその数字と花びらを見て、すぐに動いた。目当ての本棚を探す。青い花は、オウシュウナラ・ケンタウレア。ーーードイツの国花だ。

ドイツの本がたくさん置かれた棚を見上げる。本の背表紙はどれもドイツ語で書かれている。残念ながら、アリスはドイツ語は読めない。しかし、前にドイツの警察から協力要請が来たことがあり、その時に少し教えてもらった。

「たしか……Geschichte」

スペルを思い出しながら、目を本から離さずに必死で探す。そして、天井に届くほど高い位置に自分の目当ての本を見つけた。しかし、その場所にはどう頑張っても手は届かない。
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