私は視えない。僕は話せない。
話せない
多分、どっちでもなかった。
彼女は――志穂は、僕が好きでも嫌いでもなかったんだ。
好かれるメリットもなく、かといって嫌われるデメリットもない。
そんな彼女だから、僕はアプローチしたんだ。
『引っ越し?』
父の言葉に、僕はそう紙に書いて聞き返した。
「あぁ。所謂転勤ってやつでな。場所は――」
父が口にしたそこは、ここより随分と遠い県の一画。
異動先の会社は近いが、懸念するべきことがあるのだとか。
「実はな……そこ、母さんと志穂が住んでいる場所なんだ」
父はそう言った。
彼女は――志穂は、僕が好きでも嫌いでもなかったんだ。
好かれるメリットもなく、かといって嫌われるデメリットもない。
そんな彼女だから、僕はアプローチしたんだ。
『引っ越し?』
父の言葉に、僕はそう紙に書いて聞き返した。
「あぁ。所謂転勤ってやつでな。場所は――」
父が口にしたそこは、ここより随分と遠い県の一画。
異動先の会社は近いが、懸念するべきことがあるのだとか。
「実はな……そこ、母さんと志穂が住んでいる場所なんだ」
父はそう言った。