私は視えない。僕は話せない。
 聞き覚えはあった。いや、見覚えと言った方が正しいだろうか。
 父が自身の部屋に保管している、分厚いスクラップのアルバム――その中に”志穂〇〇歳”などという文字が書かれている写真が幾つかあるのを知っている。
 高校一年の頃だ。それを父に問いただしたところ、実は姉がいるのだ、と。
 その時初めて、随分と幼く古い記憶の片隅に薄っすらといる女の子が、自分の姉であることを知った。

 姉四歳の写真に僕も映っているのだが、そこには”拓也一歳”と書かれている。三つ違いだ。
 初めは姉の写真ばかりで、途中から僕も映っている写真があって、その写真を境に、分厚いスクラップは二割程度しか埋まっていないのに、以降写真が挟まっていない。

 その頃からの別居。
 なるほど、覚えていない無理はない。
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